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ものづくりへの共感を心に
青森のテーラードメーカー サンライン

毛芯仕立ての美しく端正なジャケット。UNION LAUNCHの代名詞とも言える1着をこの春夏シーズンから手がけているのが、青森県の南津軽郡に工場を構えるサンラインだ。
「テーラードの世界では日本でも五指に入ると言われていて、一緒に仕事ができるのが奇跡です」と、クリエイティブ・ディレクターの加藤公子。愛知県からの青森進出企業であった縫製メーカーを経て、現社長の佐藤克豊氏が2001年に創業。メンズのテーラースーツを中心に、パターン作成から裁断・縫製・仕上げまで、全工程を自社の同一工場で手がけている。

UNION LAUNCHを引き受けてもらったのは人とのつながりを介してだ。加藤が青森の工場に足を運んだ最初の打ち合わせから、ジャケットの細かい仕様について「ひとつひとつ確認していく作業」から始まったという。
「隅々まできちんと気を配った、“ザ・ジャパンメイド”の綺麗な縫製。UNION LAUNCHのジャケットはかなりかっちりとしたメンズライクですが、仕上がりにしなやかさがあるのは職人さんの技術力だと実感しました」(加藤)
 職人技術の高さは海外でも評価されている。トップブランドの縫製を請け負うだけでなく、3社の協業で始動したファクトリーブランド「サンライン・ジャパン」は、世界最大級のメンズ見本市ピッティ・イマージネ・ウオモに参加している。
「“ジャパン・クオリティ”を発信していこうと考える人たちと協力してピッティで発表していますが、この先の展開は課題でもあります」と佐藤社長。

「やはり、日本の縫製業界の仕組み自体をいかに変えていけるかに尽きます。徹底したOEM生産をして、それを日本だけでなく海外へと広げていく。海外はFOB契約ですから、かかるコストはすべて支払ってもらえます。そこから販売する先で、彼らが上代をどうつけるかというシンプルなシステム。逆に日本は、分業になっている部分が多く、それだけ複雑になりますし、関わる人が多いだけにコスト高にならざるを得ない。このコストで仕上げるためにいかに企業努力をするか、という前提でのビジネスのため、どうしても最後の現場が努力を求められる状況下にあります」
 だが、21歳から自身でミシンを踏んできたという佐藤社長が語るのは、“縫製”という仕事の面白さだ。サンラインの工場では現在115人が働くが、海外からの研修生などは受けておらず、全員が地元の出身者だという。

「何のためにやっているのかと問われたら、いちばんの目的は“働いている人の生活”なんです。縫製はひとくちには“製造業”ですが、ミシンやアイロンを使って、最終製品は“洋服”になりますよね。それがメンズだろうがレディスだろうが、やっぱり縫製に携わる人は“服を作る”ことが好きな人が多い。作るものが何でもよかったら、加工工場などの方が正直待遇はいいはずです。ですから、まだ道半ばではありますが、中堅クラスの製造業の待遇に近づけたいとずっとがんばってきました。“ジャパン・クオリティ”でチャレンジして利益率の高い海外でのビジネスが広がれば、それだけみんなに還元できます。作っている人たちが納得して、喜んで仕事ができる環境。それを作っていくことが使命です」
 日本のテーラード技術の素晴らしさを世界に伝えながら、縫製業界の現場をより良いものへと変えていく。その実現には何が鍵となるのか。
「結局は“人”との関係ですよね。良し悪し問わず、何をするにしても人が関わるわけですから。だけどもしかして、そこで“共感し合える人”がつながるなら、もっともっと面白くなるかもしれない。今はそれを何より大事にしています」